SEIKO 5 Sport SNZF17のバンドは巻きか無垢か。再検証編
前回、「SEIKO 5 Sport SNZF17のバンドは巻きか無垢か」と題しまして
SNZF17のバンドを切断し、検証を試みたのですが、
コメント欄のほうで「そのバンドは違うのではないか」とご指摘を受けまして、
後日よくよく確認したところ、本当に情けないことに、
別のモデルとコマを取り違えてしまっていたことに気づきました。
なんとも情けない限りです・・・
今回の件につきまして、物事の基本である確認作業を怠り、
誤った情報を発信してしまったことをお詫び申し上げます。
ご指摘してくださいました方々、
誠にありがとうございました。
後でご迷惑をおかけしたMr.shop時計屋さんにも
ご一報を入れさせていただこうと思います。
今回の更新は、前回の勘違いの再検証ということになります。
改めてSEIKO 5 Sport SNZF17のバンドの構造を確認していきたいと思います。
こちらがSNZF17のメタルバンド。
なるほど。
教えて頂いた通り、確かにコマの側面に板が折りたたまれた跡が見えます。
非常にうっすらとですが、画像でお分かりになられるでしょうか。
左右のコマの正面部にも継ぎ目が見えますね。
ということは、穴の開ている部分が折り返し箇所のようです。
こちら、中央部も穴とは対面の位置に継ぎ目があります。
拡大してみたところ、溶接?の後処理は
さほどコストをかけていないように見えますね。
さてさて、切断する箇所ですが、今回は中央部分ではなく、
中央とサイドの コマの継ぎ目を切ってみることにいたしましょう。
ノコを入れること数分。
切れました。
ちょっと切断面は粗いですが、
機械切りではないのでそこはご了承ください。
断面を拡大です。
う~ん、
やはり手切りだと断面が荒くてよくわからないですね・・・。
ちょっとヤスリをかけてみましょう。
どうでしょうか、こんな感じです。
しまった!
断面の構造が益々わからない!
金属板の折り返しということですから、
切断面は普通に左右対称だとは思いますが、
ヤスリ掛けのせいで継ぎ目が見えなくなってしまっています。
これは困ったぞ・・・。
しかし、あれこれ多方面から眺めていううちに
脳内である形が浮かび上がりました。
ちょっと段ボールで再現します。
それはこのような形。
この一枚の板を
外側から内側に互いに折りたたんでいくと・・・
どうでしょうか!
同じようなコマの形になりました!
見事、1枚の板で中央・左右と3つのパーツに分かれているような
コマの形が出来上がっています。
確かに、これだと製造コストも無垢よりは安く済みそうですね!
はぇー、よく思いつくもんだ。
というか、よく製品にするもんだ。
関心しきり。
このような金属板を折りたたんだ構造ですから、もちろん無垢とは呼べませんが、
既存概念の板バンドとも全く異なりますね。
セイコーさんの特許関係も非常に気になるところです。
というわけで、大変お騒がせいたしまたSEIKO 5 Sportのバンド問題。
再検証後の結論といたしまして、
「無垢ではないが、板バンドとも呼びたくない非常に面白いバンド」
ということで締めさせて頂きたいと思います。
コメント
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コメント (10)
検証お疲れ様です _(._.)_
色々な技術があるんですね~
毎日ブログチェックするたび、ダイバーズにメッシュというほんとにカッコいい画像が目に飛び込んできて、毎日のようにモヤモヤしてました
これでちょっと物欲が落ち着くかな(^_^;)
あきさん、こんにちは。
ダイバーズにメッシュバンドを組み合わせるのは
個人的に大定番だと思っています!
でも、メッシュに海中の異物が絡んでしまったり、
ウエットスーツに合わせてその場でバントを延ばせなかったりと、
多分メッシュを装着する人は、私を含めて丘ダイバーな人ですね(笑
こんにちは AR7です。
やらかしちゃいましたね(笑)
私も、もっと注意深く写真を見てから指摘するべきでした。
穴があったら入りたい気分です。
でも考えようによっては、この二つの実験によって、
SARB035等のメカニカルクラスの無垢バンドと
SNZF17等の5スポーツのフローティングベルトの両方の構造が明らかになったのですから、
これは“一石二鳥”と言っても良いのではないでしょうか。
ところで、コメント欄に
“単純に比較するなら、ですが
製造コストとしては、無垢バンドの方が巻きバンドよりもかかります。
廉価モデルの時計には巻きバンドが多く使われる所以です。”
という本職の方の見解が寄せられていましたが、
私は素人なので無垢も巻きも同じくらい手間と費用がかかるように思えてしまいます。
いったい何故、巻きは無垢より安く作ることができるのか?
今度は、こちらも検証して頂きたいと勝手にリクエストしてみます(笑)
AR7さん、こんにちは。
製造コストについてですが、
考え方として2つの視点があります。
一つは、
「1個製造するのに幾らかかるのか」
いわゆる数と金額の視点です。
同じ1個の製造でコストが高いか安いか。
もう一つは、
「1個製造するのにどれくらい時間がかかるのか」
これは数と時間と視点です。
同じ1個の製造時間が多いか少ないか。
1個の製造単価が安価で、製造時間が短い方が総コストは下がります。
原価が1円で1分に1個製造する場合、
原価が10円で1秒に1個製造する場合、
といった具合に、
金額(原価)と数と時間の組み合わせでコストが決まるような感じです。
再検証お疲れ様でした。変な事突っ込んじゃってすみません。(汗
ちなみにセイコーにはもうひとつ無垢っぽい無垢じゃないブレスがありまして
そちらもなかなか面白い構造です。
5スポーツよりも価格帯が1ランク下の逆輸入5の一部に採用されてます。
homepage2.nifty.com/tencho/mr-shop/watch/seiko/j5/j5zoom/kh93_95zoom.htm
こっちのブレスは継ぎ目をコマとコマの間の目立たない場所にくるように
包みこむ形になってるのでコマサイドを見ても継ぎ目は見えません。
ただ、コマを構成してる金属板は5スポーツのものより薄いので
実際に触るとシャラシャラと5スポーツのものより更に安っぽい感じがします。
セイコーの低価格機の高級感に対する努力が垣間見れて面白いです。(笑)
YOUさん、こんにちは。
リンク先のブレスを拝見しました。
触るとシャラシャラするというのは何となく想像がつきますね。
多分、ノコを使わずともニッパーでサクッとバラバラにできそうです(笑
広田さんも仰っていましたが、
時計本体とブレスの重さには付け心地に関連性がかなりあり、
バンドが軽くても時計本体が軽ければバランスは崩れないそうです。
逆に時計本体がくっそ重たくても、ベルトも同様に重ければ
これもまたバランスは保たれるそうです。
セイコー5スポーツになると、ケースも防水性が増し少し重くなりますので、
必然とブレスも重くしないと装着感のバランスが取れないのでしょうね。
タイミング遅くなりましたが、自分がやってきた範囲内の知識で書きこ。
>いったい何故、巻きは無垢より安く作ることができるのか?
一般的に金属バンドは、
駒単体作製→組立→研磨・表面処理 で作りますが
駒作製の手間が大きく違います。
巻きバンド駒は、板材→プレス打ち抜き→順送金型巻き で
無垢バンド駒は、鍛造プレス→研削 ですかね。
プレス打ち抜き→順送金型巻きはNEEZさんの指摘通り
各工程は連続処理で比較的時間は短く加工できます。簡単なもので1個/秒くらい?
(もっと早いのもあるかも)
鍛造プレス→研削は、それぞれ多段階の上に別処理なんで時間も手間もかかります。
基本的にケースを作るのと同じような工程です。
バンド駒の場合 鍛造3回、研削自動機 でやっても1個/20秒~くらい?
今回の折り畳みバンド(?)は、鍛造の部分を簡略化しているので、
無垢と同等品を より少ない手番で作る工夫のように見受けました。
ちなみにセイコーさんの出願の中には見つけることができませんでした。
おそらく日本精密さんの特開2001-8716号かな?
BFNさん、解説ありがとうございます。
本職は流石やわー(笑
やはり、無垢コマとなるとプレスは1回では済みそうにないですよね。
それに研磨工程も時間がかかりますので、
一般的な巻きバンドと比べるとコストが比較にならないと思います。
日本精密さんの特許を確認してみました。
↓リンク↓
【バンドの駒の製造方法およびバンドの製造方法ならびにバンドの駒構造】
自分が注目したのはこの一文。
「無垢材を使用することなく、板巻タイプの製法を応用することによって
実質的に無垢タイプの駒を製造することができた」
”実質的に無垢タイプの駒”って書いちゃってますね。
それだけ自信があったのでしょう。
>”実質的に無垢タイプの駒”って書いちゃってますね。
>それだけ自信があったのでしょう。
特許出願の常套句です(笑)
実際にはできてなかろうが、効果が小さかろうが
「発明」として成立させるために、そういう文句で書かなければならんのです。
まぁ、今回はちゃんと出来てるっぽいので齟齬はありませんが。
>特許出願の常套句
そういえば、特許は実現性が疑わしくなければ
それでもOKなんですよね(笑
しかし、特許文章は独特で読むのに疲れます・・・