~ 腕時計を中心とした 欲望に連敗続きの物欲日記 ~

これからの高級時計はジャケ・ドロー?

2013.05.17

2 comments

 

最近ジャケ・ドローが原点回帰というか、本気を出しています。

 

もともとオートマタ(自動人形)制作で定評のあったピエール・ジャケ・ドローですが、

2000年に入って復興してから、近年になり、いよいよ腕時計にオートマタを仕込んで

きました。

 

Jaquet Droz 『The Bird Repeater』

jd03

jd04

 

見た目に美しく、機構的に素晴らしい。

こちらの「The Bird Repeater」は世界限定8本で、お値段は4620万円。

 

それもそのはず。

この時計を構成するオートマタ、ミニッツリピーター、彫金、エナメル文字盤などは、

どれも大量生産には向きません。

 

私はオートマタを搭載した時計は、これからの高価格帯ウォッチの

ひとつのジャンルとして確立するのではないかと思っています。

 

これまで、高価格帯の時計と言えば

・永久カレンダー

・ミニッツリピーター

・トゥールビヨン

この3つでした。

いわゆる複雑機構ですね。

これらの機構にはそれぞれに特徴があります。

 

永久カレンダーは、各月による月末日の調整はもちろん

うるう年といった年単位の調整も不要。

100年単位で暦を考慮できる、まさに時計の最終形態。

それが腕に収まってしまうのですから、これを浪漫と言わずして何になりましょう。

 

次にミニッツリピーター

これは時を音で知らせる機構です。

その複雑さから言えば永久カレンダーほどではありませんが、

なにより時を知らせる「音色」に人々は魅了されます。

直接五感に響くのです。

ミニッツリピーターは今後も高級時計の花形であり続けるでしょう。

 

3つ目はトゥールビヨン

かのブレゲが発明した重力補正を備えた機構です。

こちらも、高級時計といえばトゥールビヨンと連想できるほど

各メーカーの高級ラインナップにその姿を見せています。

 

しかし、

現代ではいずれもクォーツ時計で代用できてしまうのです。

 

永久カレンダーを備えたクォーツ時計など珍しくもありません。

ミニッツリピーターに関しては、音色の違いはありますが、

相当な昔からデジタル・アラーム・ウォッチが存在しています。

極め付けはトゥールビヨン。

元々は重力の影響を少なくして精度を上げる、という機構ですが、

精度で言えば機械式時計はクォーツ時計に及びません。

 

自分も含め、何が悲しくて時間を知るためだけの時計に、

それも精度の劣る機械式時計に、高いお金を出してしまうのでしょう?

 

答えは、やはり浪漫があるからではないでしょうか。

 

電気を使わず、機械とゼンマイだけを使って、

天体の営みである時の流れを直径4cmそこそこの機械で表示する。

そして、過去の偉人達がその生涯を費やして精度の向上や芸術性を求めて

創り上げてきた機械式時計を現代でも大切に使い続けている。

 

そこに浪漫を感じるからだと思います。

 

Jaquet Droz 『The Charming Bird』

jd01

jd02

 

そして、そこに今回のオートマタ。

 

これはもう電気仕掛けではどうにもなりません。

動力は電気でなんとかなりますが、

彫金やエナメルで装飾された立体模型そのものはどうにもならないのです。

入り込む余地がないのです。

 

また、数千万単位の時計を購入できる高所得者は

常に「特別でありたい」という欲求を持っている方もいるでしょう。

「人は持っていないが自分は持っている」

「人が買えないものを自分は買うことができる」

「このようなものに大金を払うことができる自分は芸術に対して理解がある

特別な人間だ」

というように。

 

少し言い方がいやらしいかもしれませんが、高所得者向けマーケティングでは

このような、人の特別でありたいという感情をくすぐってあげるのは常套手段です。

 

オートマタはこれにピタっと嵌ります。

 

永久カレンダーは針が多く多機能で凄そうに見えますが、

時計をあまり知らない人に自慢しても「5000円の時計だってその機能付いてるよ」と

言われかねません。

ミニッツリピーターであれば、あの美しい音色で人を惹きつけることができるかも

しれませんが、視覚的インパクトは無い。

トゥールビヨンは見た目にも分かりやすく、高級時計として大ブレイクしました。

しかし、高額なわりに劇的に精度が向上するわけでもなく、

また近年では中国の時計メーカーが安価にトゥールビヨンを製造し、

高額の理由である「とても複雑で誰でもは製造できないから」という理由が崩れて

しまっています。

 

対してオートマタはどうでしょう。

 

彫金、エナメル塗装の芸術的な美しさ。

それが腕時計の中で動くわけですから、見た目のインパクトは絶大です。

しかも、その殆どがミニッツリピーターも備えています。

平面的であるクォーツ時計ではとても再現できません。

 

・機械では作り出せない職人技術の結晶

・とても手が届かないような値段

・望んだ人、全てに行き渡ることはない生産数

 

オートマタは、これからの高付加価値・高級時計のメインを張る機構になる可能性は

十分あるのではないかと思います。

 

原点回帰のジャケ・ドロー。

今後のラインナップに大注目です。

 

 

 

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コメント

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  • コメント (2)

    • wakmanndiver
    • 2013年 5月 22日

    NEEZさん、こんばんは。

    ジャケドローは、大いに注目のブランドと私も考えていました。
    確かにオートマタの工芸的美しさは
    大量生産出来るものでは無いですよね、、、

    かつてジャケドローが18世紀当時の裕福層の支持を得たのも
    大いに納得ができます。

    しかしオートマタ、
    大変芸術性も高いとは思いますが、
    これこそお金持ち用のオモチャという気がしなくもないのですが・・・

    とか言っていて
    シチズンさん辺りが意地になってくれると
    これはこれで面白くなるのですがw

    本当に時計は奥が深いですね。

    • NEEZ
    • 2013年 5月 22日

    wakmanndiverさん、こんばんは。

    実は最近、オートマタの時計に凄く惹かれています。

    クロノグラフ → トゥールビヨン → スモセコ3針 → オートマタと
    こんな感じで興味のある時計が変わってきているのですが、
    流石にオートマタ時計の入手となると、どうにもなりませんね・・・

    ヴァン クリーフ&アーペルのレトログラードを主としたオートマタが
    ロマンチックで大好きなんですが軒並み1,000万円以上します。

    本当に富豪向けプロダクツだと思います。

    そういえば、先のバーゼル2013でもブルガリが「コンメディア・デッラルテ
    ミニッツリピーター」というオートマタ&ミニッツリピーターを発表していました。

    2009年にはダニエル・ロートも「イル ジョカトーレ ヴェネツィアーノ」という
    オートマタを5,500万円で出していましたね。

    これらは見る分には最高です。

    どうせ買えないのなら、思いっきり妄想しちゃいましょう(笑)

    ブレゲのオートマタが見たい!

    あと現実的なところでいったらシチズンのカンパノラ・シリーズで
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