スピマス クロノグラフの動作 その5 ~解説~
それでは前回のスピードマスター プロフェッショナルのクロノグラフの動作を
下のような図解で解説して行きましょう。
と、その前に、綸列受けなどクロノ機構に被ってしまっているパーツを非表示にして
動きがよく分かるようにします。
まずはスタートボタンを押す前の状態です。
水色に着色した縦長のパーツは「カップリングヨーク」と呼ばれ、
オレンジに着色してある下側の歯車「4番車」と、
ムーブメントの中央にあるグレーに着色した「クロノグラフランナー」を
連結したり離したりして動力伝達をコントロールしている重要なパーツです。
カップリングヨークには「カップリングヨーク・ギア」という歯車があり、
秒針が付いている4番車と常に接し、回転しています。
このカップリングヨーク・ギアがクロノグラフランナーと接触することによって、
回転の力が加わり、クロノ針が動き始めるわけです。
カップリングヨークは、下で着色した「カム」によって往復の動きが
コントロールされます。
そして、そのカムはスタートプッシュボタンと繋がっている
「オペレーティングレバー」と「コネクティングレバー」によって
右に左にと回転する仕組みになっています。
早速、スタートプッシュボタンを押してみましょう。
①:オペレーティングレバーがスライド
②:その先についているコネクティングレバーがカムを右方向に回転させる
③:カムの回転によってカップリングヨークが動き、
カップリングヨーク・ギアがクロノグラフランナーに接触。
④:クロノ針が付いたクロノグラフランナーが回転を始める
スタートボタンはこのような仕組みで動いています。
結構ごちゃごちゃして見えますが、よく観察すると意外とシンプルなのが
わかりますね。
次にストップ動作を見ていきましょう。
①:オペレーティングレバーがスライド
②:その先についているコネクティングレバーがカムを左方向に回転させる
③:カムの回転によってカップリングヨークが動き、
カップリングヨーク・ギアがクロノグラフランナーから離れる。
ストップの動作は、スタートの動作とほぼ同じです。
違いはカムが右回転か左回転かの違いだけです。
この時、クロノグラフランナーの位置を保持しておくためのパーツ
「ブロッキングレバー」が動いて、クロノグラフランナーに接触します。
この画像では描いていませんが、カップリングヨークの下には
ブロッキングレバーに対して右回転方向に力を加えるスプリングがあります。
そういえば、ブロッキングレバーは通常プラスチックでできていますが、
バックスケルトンである3573-50は見た目の問題で金属製になっていますね。
最後はリセット動作です。
先ほどまで非表示にしていた「リセットハンマー」を復活させましょう。
リセットボタンを押すとリセットハンマーを押えていた「リセットピン」が
スライドしてハンマーから外れます。
リセットピンが外れると、リセットハンマーはムーブメント上部の
「リセットスプリング」により下方に押され、クロノグラフランナーの中心にある
「ハートカム」を勢いよく叩きます。
①:ハートカムはどの方向を向いていても必ず定位置に戻る
②: 同時に、クロノグラフランナーを押えていたブロッキングレバーが離れる
これでスタート・ストップ・リセットの一連の動作は完了です。
いかがでしょうか。
ちょっと駆け足気味でしたが、おおむねこの通りです。
再現してみての感想は、
・パーツ点数が少ない
・動作が必要最小限
これに尽きると思います。
やっぱりCal.861は安心感がありますね。
コメント
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コメント (5)
すっごくわかりやすいです(・∀・)
って、まだ一回読んだだけでは理解出来ていませんが(^_^;)
まさに保存版のページです _(._.)_
NEEZさんのクロノグラフ講座は勉強になります。
ありがとうございます。
5100も部品にプラスチック使用と聞いたことあります。
レマニア以外でもプラスチックを使ったりするのでしょうか?
ひとつやふたつ部品をプラスチックにしても、たいして製造コスト減には
ならないと思うのですが。
以前から耐久性の悪いプラスチックを何故使用するのか疑問に思ってました。
あきさん
クロノグラフは一度に複数の動作を行っていますので、
なかなか説明が難しいです。
本当はもっと上手く解説できればよいのですが・・・
イワさん
5100の画像を探して見てみました。
確かに歯車にプラ製品を使っていますね。
クォーツ部品の流用でコスト削減でもしてるのでしょうか?
ちなみにスピマス プロのブロッキングレバーがプラ部品なのは
押さえつける対象であるクロノグラフランナーの歯車を傷めないため
と聞いたことがあります。
このほどスピードマスタープロフェッショナルのクロノグラフリセットボタンが効かなくなり、ストップ出来てもリセット出来ない状態で修理も考えたのですが資金不足の為、とりあえず自分でリセットしたくNEEZさんのブログにたどり着き、構造をみながら裏蓋を外し、手動にてリセットピンを動かしたところ、リセットハンマーが解除され無事リセット出来ました。
どうやらリセットボタンの不具合にて、何だかの原因にてボタン内部のピンがリセットピンパーツに届かなくなったのでは?と自分なりに考えています。
修理、オーバーホールをすればいいのでしょうが現在資金不足で
とりあえず今はクロノグラフ操作をせず通常使用のみにする事にしました。
素晴らしくわかりやすい解説どうもありがとうございましたm(_ _)m
凄く助かりました。
木原さん、コメントありがとうございます。
何気に作ったスピマス解説がお役に立てたことを嬉しく思います。
これぞインターネットの世界ですね。
本当はランゲ&ゾーネのダトグラフやETA7750もやりたいのですが、
現物を持っていないのと、ちょっと時間が足りなくて計画倒れという感じです。
とりあえず、お役に立ててなによりです。