調速資料の決定版!『機械式時計講座』
ずっと買おう買おうと思っていて先送りにしてきた本をようやく入手しました。
小牧昭一郎先生の本ですから、内容が相当濃いのは分かっていましたが、
なんというか、調速に関して和書でここまで詳しく書かれている本が
出版されるのは本当に数十年ぶりではないでしょうか。
それほど中身のある本です。
内容自体は冒頭に、雑誌「世界の腕時計」に連載されてた機械式時計入門講座を
まとめたもの、と書かれていますが入門というには難しすぎますね。
これが入門だったら中級・上級はいったいどうなるのかと。
それほど調速に関して深く掘り下げられている本です。
ようやく待ちに待った現行和書による時計の技術書。
これは貴重ですよ!
まだ全てに目を通せていませんが、
本書の流れは概ね以下のような感じです。
■脱進機の動き
■ヒゲゼンマイと歩度
■刻音の詳細
目次を見たほうがもっとわかりやすいですかね。
第1章 どのように機械時計は動くか
§1.1 表輪列
§1.2 裏輪列
§1.3 香箱とぜんまい
§1.4 脱進機の動き
§1.5 安全作用
§1.6 脱進機の動作に関する用語解説
§1.7 動作線図の見方
§1.8 安全作用と時計の信頼性
§1.9 てんぷと振動数
§1.10 よい時計とは
第2章 どのように歩度は決まるか
§2.1 時計における等時性とは
§2.2 等時性の実際
§2.3 等時性を乱す要因
§2.4 てんわの片重り
§2.5 ひげぜんまいの重心移動
§2.6 ひげぜんまいの重心点とは
§2.7 切り取られたひげぜんまいの重心点
§2.8 重り付けによる等時性の調整
§2.9 脱進機誤差
§2.10 平立差の原因
§2.11 楕円ほぞによる平均値違い
§2.12 平均値違いの感度と最大値
§2.13 ほぞびつによる平均値違い
§2.14 理想のひげぜんまい
§2.15 ひげぜんまいの実際の動き
§2.16 温度補正の歴史
§2.17 温度補正と金属材料
§2.18 日欧のひげぜんまい理論の比較
第3章 どのように振り角は決まるか
§3.1 機械時計のエネルギー
§3.2 てんぷでのエネルギー消費
§3.3 てんぷのエネルギーとQの関係
第4章 どのように歩度は測られるか
§4.1 刻音
§4.2 刻音によるコーアクシャル(同軸)脱進機の分析
§4.3 刻音と歩度の測定
§4.4 歩度と振り角の実際
§4.5 歩度・振り角変動の原因
第5章 これからの機械時計
§5.1 近年のイギリス時計事情
§5.2 クロノグラフと発停誤差
§5.3 スプリングドライブ
§5.4 機械時計の今後の課題
§5.5 コンクール時計にみる機械時計の可能性
なんというか、知りたい情報テンコ盛り!!
ホント、よくぞ刊行してくれましたよ・・・(泣
自分、この巻頭にある『がんぎ・アンクル動作線図』なんというのは始めて見ました。
それと、個人的に一番貴重ではないかと感じたのはこれ。
表:時計の精度に関係すると考えられる、調速機まわりの細かな構造要因
コーアクシャル脱進機に関する記事も載っています。
ともあれ、 久々の和書の技術書です。
今後このような書籍が発行されるのは何年後になるでしょうか。
お値段は税抜8,600円と少し高額ですが、
この手の技術書は古本がオークションで数万円でやり取りされているのを考えると、
是非とも入手しておきたい一冊ですね。
本当に永久保存版。
あと、香箱のゼンマイトルクに関する本とかも出ればいいのになぁー。
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