大航海時代と精密時計 その1
今回の更新は、美しさや仕上げといった時計の「物」としての側面ではなく、
時計そのものの「役割」について書きたいと思います。
少し長くなりそうなのでシリーズ建ていたしますがご了承ください。
さて、
よくブレゲのことを「時計の進化を200年早めた男」などと呼びますが、
では時計の進化とはそもそも何でしょうか?
一つの答えは、時計は時間を見るためのものですから、
やはり「正確性」ということになるのではないでしょうか。
ではでは、時間が正確に測れるようになると、どのようなメリットが
あるのでしょうか?
待ち合わせに遅れないようにするため?
パスタの茹で時間を測るため?
実は、「時計に正確な時間を刻ませること=国家戦略」であった時代が
あります。
大航海時代です。
300年ほど前、ジョン・ハリソン(1693-1776)が作り上げた時計は、
日差0.3~0.4秒という驚異的な精度を誇っていました。
この時計は、今までもよく高精度の時計に名前が付けられます「クロノ
メーター」と呼ばれるものです。
高精度の時計「クロノメーター」はこの時代、航海で船の座標を知るために
用いられました。
皆さんもよくご存じ、地球上での座標は「緯度」と「経度」で表されます。
簡単におさらいすると「緯度」とは赤道を基準とした縦の座標。
「経度」とは旧グリニッジ天文台を基準とした横の座標です。
大海原で船の座標を正しく知るということは、船員の命を守るため、
もっと正直に言ってしまうと、大航海時代、貿易や植民地確保のために
他国を出し抜き、自国を繁栄させるためには絶対に必要なことなのでした。
時計はまさに船舶の座標を計測するための機器として用いられたのです。
皆さんも疑問に思ったかもしれませんが、
いったいどうやったら時計で地球上の座標が測れるのでしょうか。
私も調べるまで全く想像がつきませんでした。
知ってみると時計というものが宇宙と密接に関係していることに気付かされ、
そのスケールの大きさに少し怖くなりました。
例えるなら、時計が自分の手を離れてどこかに行ってしまいそうな、
そんな感覚です。
でも時計についてもっと知りたい。
興味が尽きることはありません。
少し話がそれましたが、
ここで座標の調べ方について順を追ってみていきましょう。
まず「緯度」の計測方法から。
昔から緯度については「地平線から北極星までの角度が緯度とほぼ同等」と
いうことが知られていました。
「緯度」とは赤道を基準の0°とし、南北の北極・南極をそれぞれ90°として、
地表での縦位置を角度で表したものです。
図で表すと以下のようになります。
問題の「地平線から北極星までの角度が緯度とほぼ同等」とはどういった
状態でしょうか。
これも図で表します。
北極星は地軸の延長線上にあり、しかもとても遠くにありますので、
地球上のどの位置から北極星に対して線を伸ばしたとしても、
それが地軸に対してほぼ平行であると言うことができます。
このとき、地球の中心から地表に対して直線を伸ばした時にできる赤道との
間の角度θは、地点Aが地表に対して水平に引いた線と北極星まで伸ばした
直線の間にできる角度θと平行線で同位角になっている、ということが
わかります。
つまり、赤道から地点Aまでの角度と、地点Aにおける地表水平線から
北極星までの角度が同じになる、というわけなのです。
試しに地点Aを赤道側に近づけてみましょう。
確かに、2つの角度θが同じように狭くなりました。
このことから、大海原で現在の緯度を知る方法は、
「水平線から北極星までの角度を知ればよい」ということになります。
どうですか?
私はこの話を聞いて、まるで物語を読んでいるように興奮しました。
そして、自分には知らないことが多過ぎるとも思いました。
もっといろいろ勉強せなばなりません。
少し長くなってしまったので、肝心の経度と時計の関連については
次回更新で書くこといたします。
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