トゥールビヨンを分解しました。その2「キャリッジ分解編」
フライングトゥールビヨンの付け根の構造を目視で確認すべく、
前回はキャリッジ取り外しまで行いましたが、今回はそのキャリッジ自体を
分解していきたいと思います。
目的はあくまでキャリッジの根本なのでテンプ受けには手を付けません。
接写してみて気づきましたが、鳥の首の部分はフラットではなく山のように
角度が付いていますね。 エッジの処理は、そりゃ高級メゾンのようには
いきませんが十分健闘しています。
この点は素直に評価できます。
というか、かなり綺麗。
では下側の分解に着手です。
まずは、ガンギ車とアンクルの受けのプレートを外します。
スルスルっと真上に持ち上げれば抜けるのですが、余計な隙間が全く無く 、
左右のどちらかが少しでも傾くと途端に抜けなくなります。
表面処理はそれなりですが、穴の加工精度には驚きですね。
現代の工作機械を用いればこういう精度も簡単に出せてしまうのでしょう。
アンクルを外します。
ガンギ車を外します。
次に、左右のアームに筒状のパーツがありますが、これも真上に抜けそう
なので外してみましょう。
やっぱり取ることができました。
更に、ドテピンの付いたプレートも、ガンギ車とアンクルを受けていた
プレート同様に上に抜くことが出来そうなのでやってみます。
外れました。
これまで外したパーツ達
ここまではネジや単なる嵌めこみなどで素直に外せそうなパーツだけ
でしたが、この先は手がかりが無く、どうにも手が進みません。
ここで一旦作業を中断して、肝心の根本の構造観察です。
とりあえず接写してみます。
中央にネジが見当たらないので、これは圧入ですかね・・・
固定4番車に大きいルビーが嵌め込まれているのでベアリングではなさそう
です。 横から隙間をのぞいたのですが、ベアリングの類は見当たらない。
だからといって動きが重いということはなく、ちょっと触れるだけで
ギュンギュン回ります。
ひっくり返して裏側からも見てみましょう。
うーん、 なるほど。
このフライング・トゥールビヨンは固定4番車の中心にルビーを嵌めこみ、
それをカナの付いたプレートと、上側のプレートで挟み込んで支持している
んですね。 カナの付いた下プレートの直径が大きいのはキャリッジの傾きを
抑制するためでしょう。
やはり、これ以上の分解は難しそうです。
ネジも見当たらないし上下プレートの固定は圧入の線が濃厚。
とりあえず今回はここまで。
でも疑問が晴れました。
大方、分解の当初の目的は達成できたと言えるでしょう。
聞くよりも、実際に指を動かし目視で確認することで得られる知識は一生もの
です。 今後も解らない構造のものは分解していきたいと思います。
じゃ、元に戻しましょうかね。
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しかし
やっちまいました・・・
ギャー!!!
爪石が取れてもうたー!!!!
次回更新は
トゥールビヨンを分解しました。その3「組み立て復活編」です。
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コメント (2)
この特大ルビーベアリングについては、拙著
難物トゥールビヨンの修理のナゾ
www3.coara.or.jp/~tomoyaz/higaax07.html#070223
で解析しています。たしかいイラストですが写真は構造がわかった感激でとるのを忘れていたのです。
以上
山本様
貴重な情報をありがとうございます。
頂きましたリンク先の
「この時計のトゥールビヨン機構はかなり手馴れた設計であり、かなり丈夫に作られている。」
とある通り、私もこのトゥールビヨンを組み立てたとき
想像よりはキッチリと組み付けできるなぁと感じました。
とは言え、部品単体での入手もできませんし、
なるべくトラブルは被りたくないムーブメントです。